1970年ごろの谷戸商店会

私がまだ「少年」と呼ばれていたころ、家からすぐのところに商店街がありました。お小遣いが少なかった私は、あたり付のアイスやお菓子を長時間選んでは店のおばさんに怒られていました。私にとっては真剣勝負であったのですが、お店のおばさんにとっては電気を無駄にしてはいけないという「母の気持ち」であったのかもしれません。
当時、商店街のおじさんおばさんは、子どもを叱ってくれるもうひとりの「父であり母であり先生」だったんです。
商店街にはそんな思い出もあり、今でも商店街と聞くと心が弾むというか、ワクワクが止まらない場所です。
谷戸商店街協同組合が設立された50年前と比べ、皆様の普段の暮らしの中での商店街の位置づけは大きく変わってきていると感じます。
しかしながら、少子高齢化の時代に、多世代が交わるコミュニティの場となる商店街は重要な存在です。
私たちは「街ごと家族」というテーマのもと、昭和26年の発足から活動してまいりました。
商店街にとってお客様は神様である前に「家族」の一員であると考えます。
だからこそ、余計なおせっかいを焼きたくもなりますし、良い商品が入った時は話さずにはいられない。
人情ではないんです。家族ですから、いいものはいい、悪いものは悪いと分け隔てなく皆様とお付き合いしていきたいと考えています。

私たちのような小さな個人商店が大規模なデパートやスーパーとどうやって共存していくか?
平成から令和の時代の商店街のテーマはまさにこれであると思います。
仕入れのルートも量も条件も、大型店にはかないません。
しかしながら私たちには何十年もやってきた自信、商品を見る目、ご近所の皆様と共に歩んできたコミュニティ(ネットワーク)という心強いアイテムがたくさんあります。
安売りはできないけれど、お客様の求めていること以上にお応えすることはできる。
自分の店にはないけれど、どの店で扱っているかはすぐに教えてあげることができる。
「街ごと家族」というキャッチフレーズに負けないように、街のコンシェルジュとしての役割を果たしていきたいと考えております。